半月板損傷に対しては、以前なら部分切除を行なっていたような症例（年齢、スポーツ活動レベルにもよりますが）にも縫合(半月板に糸をかけて固定します)し、半月板を温存しています。
特に成長期の半月板損傷に対しては、将来も長いため積極的に縫合しています。　

最近のスポーツ・膝関節の学会では、半月板切除は可能な限り避けるべきという流れになってきています。それは、半月板切除術後に痛みや水腫が続き、スポーツ復帰ができない症例が少なからずとも存在するからです。半月板の損傷の程度があまりにひどい場合は縫合しても、最終的に治癒しませんので部分的に切除せざるを得ませんが、当科では切除する場合でも最小限とし、可能な限り半月板を温存するようにしています。

ひどく断裂していても、成長期やスポーツレベルが高い場合にはfibrin clotといって、手術時に同じ足の静脈から20mlほど採血して得られるものを用い、縫合部の治癒を促進させる努力をしています。このFibrin clotには成長因子が含まれており、半月板細胞の誘導と治癒の促進を促します。

また、円板状半月板損傷においても、強い変性が見られない場合、
形成切除（部分切除）後に縫合を行っております(図)。

　　
　　　完全型円板状半月板　　　　　　関節包付着部での断裂

以前ならこのような症例は半月板のほぼ全てを切除せざるを得ませんでした。


このような円板状半月板損傷に対して
大きい半月板なので、これを少し切除し、正常半月板の形に近づけ、縫合します。





縫合術後4ヶ月での再鏡視像です。
縫合した糸も見えなくなり、完全に断裂部が癒合しております。


円板状半月板は20から30人に1人の割合で存在すると言われています。
成長期のスポーツ選手の膝痛の原因の1つです。
この円板状半月板損傷に対する手術は、以前は亜全切除(ほとんど全部切除する)が一般的でした。
しかし、円板状半月板亜全切除術後に離断性骨軟骨炎が発生した症例もありました。

強い変性断裂があれば切除も仕方ないケースもありますが、
当科でも以前なら切除していたような断裂でも積極的に縫合するようにしています。
多くの施設で行われている手術ではないため、今後の長期的な経過報告が待たれますが、
切除した半月板は戻らないので、安易な切除は避けることが最も重要です。

縫合した場合は3週間の伸展位固定、非荷重とし、
スポーツ復帰は術後約6ヶ月となります。