皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は膝関節の脱臼についてお話いたします。
膝関節は大きな靭帯が4本あります。
前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靭帯(MCL)、外側側副靭帯(LCL)です。
外側側副靭帯は構成体と言って、複雑な靭帯の寄せ集まりの構造をしています。
これらの靭帯で膝は安定しています。

膝関節の脱臼は発生率 
0.2%と非常に稀な外傷です。

原因は交通事故、フットボールなど。

低エネルギーでも発生し、外来時整復され、見過ごすことあり。
正確な発生率不明と言われています。

脱臼膝の受傷時レントゲン
dl6























脱臼膝の受傷時レントゲン

dl1






















脱臼膝の受傷時MRI

dl2






















好発スポーツ:

アメフト35%

レスリング15%

ランニング10% と言われています。

Shelbourne KD Orthop Rev 1991

分類

前方脱臼40% 過伸展損傷 posterior capsule-ACL-PCL  50°の過伸展で動脈損傷

後方脱臼33% ダッシュボード損傷  PCLの損傷

側方脱臼 内側18%、外側4% A/PCLも損傷あり

回旋脱臼 5% 後外側への脱臼が最多                         

Kennedy JC    JBJS     1963

Scenck RC       ICR        1998

このような分類もあり、KD5になるほど重症です。
KD1: ACL+MCL or LCL

KD2: ACL+PCL intact collateral ligament (hyperextension mechanism)

KD3: ACL+PCL+MCL intact LCL, PLC

KD4: ACL+PCL+LCL intact MCL

KD5: ACL+PCL+MCL+LCL


急性期治療の目的:
脱臼の整復と、血行再建
(血行再建をしても、切断率13%)


血管損傷の頻度:
4.6-80%


内膜損傷:前方脱臼時顆部で伸ばされて

完全断裂:後方脱臼で

血管損傷:

高エネルギー 32%                                  Green NE JBJS 1977

低エネルギー 4.6%             Schelbourne KD Orthop Rev 1991

虚血が8時間以上経過した例:切断率86%

足背動脈の触知が可能であっても、血管損傷を否定できない。

capillary refillが良好であっても安心できない。

直後に血栓ができる場合と、数日で形成される場合ある。

ABI(ankle-brachial index)も有用 0.90以下で血管再建となること多い。血管造影必要


API=損傷側の後脛骨動脈圧 / 非損傷側の後脛骨動脈圧

API<0.9で血管造影を


血行再建のアルゴリズム:    Redmond JM 2008

神経損傷:16-50% 後方脱臼に好発

血行再建:高K血症、高ミオグロビン血症


高頻度に合併するものに、腓骨神経麻痺があります。
腓骨神経はあまり回復しやすい神経とは言えません。。。

dl3






















dl4






















治療:

確立されたものがないのが現状です。
教科書には膝専門医が生涯経験するのは数例のみと書いてあります。

保存的より手術した方が成績良好と言われています。


当科では、
急性期
(2週間以内)に修復出来るものはしておく必要があると考えています。
3
週間以内に手術したら(再建も含め)成績は良好です。

当科での成績は第82回日本整形外科学会で発表しております。

今回のお話は専門的になってしまったことをお許しください。

膝関節脱臼(複合靭帯損傷)に対し、当科では、受傷後早期に靭帯修復術を行います。
再建術は手術が大きくなります。
修復術で、治せる靭帯は早期に治しておきます。